◆選定理由                         
 絶滅、環境悪化

◆形態と近似種                        
 全長約7〜10cmで口ひげがない。青味を帯びた淡褐色の体色は地味だが金属光沢があり、細かい鱗が網目状に見える。雄は産卵期に胸から腹にかけて赤くなるが、県内産の他のタナゴ類に比べると婚姻色も比較的地味である。

◆分布状況                       
 神奈川県、新潟県以北の本州(青森県を除く)が自然分布域で、その他の地方のものは移植による。
 県内では近年捕獲された記録はなく、標本や写真などの記録は残っていない。最後の生息情報は1934年、現在は干拓されて消失した鎧潟からのもので、当時は通年採捕することができたという。

◆生息を脅かしている原因                   
 乾田化が進んで各地にあった潟湖が消え、水路がコンクリートや綱矢板で固められ、水草が繁茂する水域が減少してきたことが絶滅の主因と考えられる。
 タイリクバラタナゴが1962年ころから県内でも繁殖し始めたが、この移入種との生活空間や餌、産卵する二枚貝をめぐる競争に敗れたことも原因になった可能性がある。

◆特記事項
 県内では、信濃川水系を中心と平野部の低地を流れる緩流河川や、池沼に分布が限定されていた可能性がある。
 新潟市舞潟在住の藤崎氏によれば、昭和23年ごろから4〜5年間、農道わきの水路に、ゼニタナゴとチョウセンブナ(地方名:イサケーブナ)が大発生したが、昭和30年ごろにはほとんど見られなくなったという。ゼニタナゴはヤリタナゴなどと比べて頭が小さく腹が大きく、鱗がはがれやすかったとのことである。

◆追記・・・
県内「絶滅」のゼニタナゴ見つかる!

 半世紀も前に新潟県内では絶滅したと思われていたゼニタナゴが、2019年、山間のため池で発見された。専門の研究者に遺伝子解析を依頼したところ、宮城県の鹿島台の個体群に特有の遺伝子が見つかった。この保護地区から持ち出されて、県内の溜池に移植されたものと結論づけられた。
 

             
ゼニタナゴ♂(琵琶湖博物館展示水槽)
半世紀ぶりに新潟県内で見つかったゼニタナゴ
  コイ目 コイ科  ゼニタナゴ  Acheilognathus typus   新潟県カテゴリー EX(絶滅) 
 環境省カテゴリー CR(絶滅危惧TA類)