外来爬虫類 Exotic Peptiles |
新潟市西区鷲ノ木大通川の風景 甲羅干しするミシシッピアカミミガメ (幼体の商品名はミドリガメ) |
◆日本は世界有数の爬虫類輸入大国
2008年には年間30万頭以上が輸入されており、その大部分が陸産、海産のカメ類である(金成,トラフィックジャパンウェブサイト)。中にはワシントン条約に掲載されている希少種も含まれており、原産国での危機的状況に追い打ちをかけているのが実態である。
一方、持ちこまれた動物の中には、飼育放棄や逸出によって自然界に入りこみ、新たな環境に適応して定着、繁殖するものがある。新潟県内で野生化している外来爬虫類は、ほとんどがペットとして持ちこまれた北米原産やアジア原産の淡水性カメ類である。ニホンヤモリは、古い時代から舟運とともに港町に分布を拡大したもので、原産地がはっきりしない。
◆放生会による分布攪乱
我が国には、古くから魚やカメ、小鳥などを自然界に放す放生会(ほうじょうえ)という行事を行う社寺がある。右の歌川広重の「名所江戸百景深川萬年橋」に描かれたカメは、放生会のために売られているニホンイシガメである。江戸時代の浮世絵に登場するカメはすべてニホンイシガメで、アカミミガメはもちろんクサガメは登場しない。
放生会は本来は生命の尊重、慈悲の精神、生きものに感謝の念を捧げる等の仏教精神が元になっているといわれるが、現在では単なる観光目的のイベントとなってしまったところもあり、中にはミドリガメやクサガメなどのカメすくいが行われているところもあるという。
平野部の河川湖沼に広く定着してるクサガメは、近年の研究で中国・朝鮮半島原産の外来種説が有力になっている。新潟県においては大正時代までは記録がなく(中村政雄著
新潟縣天産)、昭和に入ってから急速に分布を広げたが、伝統行事やペット飼育が影響した可能性が高い。
◆県内記録種
新潟県内で記録された国外・国内外来種のカメ類は、亜種、雑種を含めて12種類であるが、4種類は1例のみの記録である。12種のうち北アメリカ原産種は6種、中国大陸〜東南アジア原産種は5種、国内外来種と思われるもの1種である。
新潟県内の3水族館(新潟市マリンピア日本海・長岡市寺泊水族博物館・上越市立水族博物館)には、2017年8月31日現在、8種95個体の外来カメ類が持ちこまれているという。
新潟県内水族館外来カメ類取扱記録
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年間100万匹も輸入されたミドリガメ |
新潟市で捕獲されたワニガメ |
江戸時代にはいなかったクサガメ |
原産地不明のニホンヤモリ |
名所江戸百景 深川萬年橋
放生会を待つ吊し亀 歌川広重1857年
(静岡市東海道広重美術館蔵) |
大正14年(1925) 『新潟縣天産誌』抜粋
淡水カメはニホンイシガメとスッポンのみ。
クサガメは記載がなく、昭和に入ってから
急速に分布拡大したとみられる。
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