歩く、潜る、泳ぐ、飛ぶ・・・スーパー昆虫 ケラの秘密 !     
 
地上に出てきたケラ

 水面を泳ぐケラ
  ケラは直翅目(バッタ目)ケラ科に属し、地中でミミズや植物の根などを食べて暮らすコオロギに近縁な昆虫である。体長は30~35mm、地中生活に適応して体の断面は丸く、前脚は大きくショベル型、頭部には触角、腹端には1対の感覚毛をもつ。体表は微毛におおわれて水をはじき、汚れにくい。成虫の後翅は長く飛翔に用いられ、前翅は短いがオスには発音器官がある。ケラは、地上を歩き、地中に潜り、水面を泳ぎ、空を飛び、鳴くこともできる。昔、何でもこなすが器用貧乏の役者の演技を「けら芸」と呼んだそうであるが、ケラは多彩な能力を駆使して様々な環境に適応しているスーパー昆虫なのだ。
 ケラは地中生活に適応した結果、体の構造は同じく地中生活をするモグラとよく似たものとなった。全く異なる分類群の動物が、同じような生活様式に適応進化した結果、似通った形態になる現象を収斂(しゅうれん)と呼ぶが、これもその一つである。ちなみに水生昆虫の一種で、水底の砂泥中に潜って暮らすモンカゲロウ類の幼虫も、ケラとよく似た形態をしており、これも収斂進化の結果と考えられる。
 ケラの英語名Mole cricket(モグラコオロギ)とは、特徴をよく言い当てた呼び名である。学名は Gryllotalpa orientalis 、grylloはラテン語でコオロギ、tarpaはモグラの意、orientalisは東洋の意味である。
 「手の平を太陽に」の歌詞、♪ぼくらはみんな生きている・・・ミミズだってオケラだって・・・みんなみんな生きているんだ友だちなんだ・・・♪に登場するケラだが、実は農作物の根や新芽を食い荒らす農業害虫。残念ながら農家の友だちではない。畑を耕していると、割れた土の塊から5~6mmの小さな幼虫が次々と飛び出してくることがある。ケラのメスは直径1.5cmほどの卵室を作り、中に三十数個の卵を産むという。幼虫は真っ黒でコオロギの仲間ノミバッタそっくり、ジャンプ力が強く、一瞬で姿を消してしまう。
 ケラの天敵はカエルや、ムクドリなどの野鳥、モグラやタヌキなどの哺乳類である。天敵昆虫としてはミイデラゴミムシが有名。幼虫は、卵室内に侵入して、ケラの卵を専門に食べて成長することが知られている。
   
 
 大きな前脚には数本の突起があり、土掘りに役立つ。
手の平に置くと、前脚を使って指の間に潜り込む。昔の子どもの遊び友達だった。
  
地表近くにあった幼虫が巣立った後の卵室
直径1.5cmほど内面はなめらか
 
 巣立った直後のケラ
前脚はまだ小さく、ジャンプ力がある
 
ケラの天敵ミイデラゴミムシ
幼虫はケラの卵を専門に食べる
成虫は防護のため、尾端から高温の
ガスを噴射することで有名
 
フタスジモンカゲロウ幼虫
体は円筒形で、頭部先端が尖り、前脚で底泥中を掘り進むことができる。
 
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