1993年にシベリアのレナ川水系上流で、我が国では特定外来生物として掲載されたヨーロピアンパーチとノーザンパイクに出会った。
どちらも個性ある魅力的な魚ではあるが、日本に持ち込まれれば極めて危険な存在となる

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シベリア マヤ川で出会った魚たち

【ノーザンパイク】 学名:Esox lucius  日本名:カワカマス ロシア名:シューカ
 
カワカマス科に属する淡水魚。カワカマスという名は、一見海に住むカマスに似るからである。カモグチ(鴨口)という別名もあるが、口は大きく横に広がり、鋭い歯がある。体形は棒状で細長く、全長1mを越す。
 分布はヨーロッパからシベリア、北米大陸に及ぶ。アムール川水系に分布するアムールカワカマスは、別種(Esox reicherti)としても扱われることもある。
 完全な動物食で、他の魚や水鳥の雛、水辺に近づいた小形哺乳類も襲う。緩流部で静止して待ち受け,、餌を発見すると、猛烈な速さで突進する。背びれと尻びれが体の後端近くに位置しているのは、瞬発的な推進力を発揮するためだ。頭部には大きな感覚孔が開いており、水音にはかなり敏感なようである。
 なお、ユーラシア大陸のヨーロピアンパーチや、北米大陸のバス類が、現地で大繁殖しないのは、このパイク類やガーパイク類(北米)などの、より強力な捕食者がいるからである。

 
体形は一見カムルチー(雷魚)に似るが、突進速度は、はるかに速い。
口は大きく横に広がり、鋭い歯が多数生えている.
体の長さの半分程度の大きな餌も飲み込むことができる.
中国の黒竜江省(アムール川上流)では、カワカマス(アムールパイク)を狗魚(コーウィー)と呼ぶという.日本語では犬魚という意味で、鋭い歯をもつことに由来するという.

成魚(上)と
 スピナーに食いついた幼魚(下)

 黄色い地色に青黒いストライプ、腹側の赤いひれ・・・体色は派手であるが、極めて美味な魚である.
 鰓蓋に鋭い棘があり、
  不用意にさわると怪我をする.

 
 【ヨーロピアンパーチ】 学名:Perca fluviatilis   ロシア名:オークニー

 スズキ目パーチ科に属する淡水魚で、サンフィッシュ科(バス類)にごく近縁である。黄色みを帯びた体側に黒い縞模様、腹側の赤いひれが特徴的である。全長は普通40cmほどであるが、汽水域に住むものは数十cmに達するという。
 スカンジナビア半島からロシアのシベリア地方に至るヨーロッパプレートに広く分布しており、アムール川水系には分布しない。アムール川(上流部は中国の黒竜江)には、近縁のケツギョが分布する。
  生態はバス類によく似ていて遊泳能力が高く、全速で突進して急停止もできる。完全な動物食で魚食性が強く、小魚や水生ネズミ類なども捕食し、共食いも見られるという。流れの緩やかな淵を群れで泳いでいるらしく、十匹以上たて続けに釣り上げることができる。繁殖能力は極めて高く、雌の産卵数は30万粒に達するという。  
 現地では重要な食用魚で、シベリアでは、丸ごと焚き火で焼き、焦げた皮をはがして食する。淡泊な白身で、極めて美味である。食用目的に移植が行われているが、移入先の在来生態系に大きな影響を与えているという。 
  本種は生態系の頂点に立っているわけではなく、ノーザンパイクやカワウソなどによって捕食されている。